みかん畑の撮影会
秋のはじまりに、Fredericのぬいぐるみを撮影しに出かけました。
電車で1時間半かけて静かな町にある里山へ。
秘密の場所に連れられるように、写真家の知子さんの後をついて行きました。
 森の入り口。

知子さんはよく自然の写真を撮られています。
鬱蒼と茂る木々や、刻々と流れる川、移りゆく空、時には枯れきった花も。
知子さんが撮られる写真には、独特の空気が流れています。
穏やかでいて、なんだか切ない。
その切ない感じが私は好きです。

そんな知子さんが、今回は自然ではなく、私の作品を
被写体に選んでくださったので、とても嬉しかったのです。
 簡潔なシャッター音が響く。

里山の奥にはみかん畑がありました。
まだ青青とした熟れていない背の低いみかんの木の下で、
ぬいぐるみたちを取っ替え引っ替えしながら、1日がかりで撮影しました。
目も開けていられないような眩しさから、心細くなるような薄暗さの中、
1日中自然に囲まれていたのは久しぶりのことです。
日中から日暮れまで森の中にずっといると、日の向きが変わるにつれて、
だんだんと心も穏やかに変化していくようでした。
日常の1日とは違う、心地いい時間を過ごしました。
 みかんの木は形が美しい。

後日、写真が出来上がり、見せてもらうと、
ずっと撮影についていたにも関わらず、知子さんが撮った写真は、
私が目にしていたその日の風景とはなんだか違っていました。
もちろん同じ時間に、同じ場所にいたのだけれど。
その写真は、やっぱり独特の空気をまとっているのです。
 photo by tomoko sasaki
一番最後に撮ってもらった、一番のお気に入りのLAPINの写真。
日が隠れてしまって、唯一取り直した曰く付き。

写真は、古いハンカチで作ったお揃いのカバーに入れてそれぞれ持っています。
お店にいつも置いていて、友達が来る度にいそいそ開いて見せています。
ハンカチにその日の空気を閉じ込めているようで、
開く度に、みかん畑の青青とした新鮮な息吹を感じます。
今度は、みかんが色づいた頃にまた行きたい。
 バス停近くの壁画も素敵でした。

ちなみに、旅日記のあとがきに書いた、
ルーマニアとハンガリーを旅している…というのは知子さんご夫妻のこと。
もう帰国されて、先日、旅の写真を見せてもらいました。
胸をぎゅーっと強く掴まれるような愛しい写真でした。
旅の写真は知子さんのサイトで見られます。

text by : yuki
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夢のようなおやつ
夢のようなお菓子、日本でも見かけます。
探せばいくらでもあると思うのですが、
一番に思い浮かべるのは、ふかふかのホットケーキ。
お菓子というよりも”おやつ”と言う方が似合う。


何かとよく行く鎌倉の駅近くに、
イワタ珈琲店という老舗の喫茶店があります。
お店の前には行列ができています。
皆のお目当てはホットケーキ。


店の前で並んで待って、席に着いてからもその登場を待つ。
じっくり焼き上げ、順番に各テーブルに運ばれていく。
1日にどれくらい焼くんだろう?きっとすごい量だと思う。
かなりの厚みのある、2段重ねのホットケーキがやっと目の前に現れた。
かなりお腹が減っていないと、1人じゃ食べきれない。
2人で1枚ずつ取り分けて食べるのがちょうどいい。


お皿の端に添えられた角バターを余熱で溶かして、シロップをたっぷりかける。
この作業がホットケーキの醍醐味だと思う。
普通のホットケーキのふわふわ軽い食感じゃなくて、ここのはもっちり重みがある。
ホカホカの香ばしい粉の香りと、メープルシロップの濃厚な甘い香り。
とっても美味しい!これぞ、”夢のようなおやつ”!


お店の雰囲気も落ち着いていて、居心地がいい。
この後はどこに行こうか、じっくり計画を練られる。
太陽の光が充分に入る気持ちのいい中庭があり、
奥にはサンルームのようなガラス張りの席があります。
今度はそちらに座りたいなと思っています。


text by : yuki
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お正月旅行


年が明けてから早ひと月、、、。
瞬く間に1月が過ぎていきました。早いものですね。
長らくいただいていたお正月休みには家族と旅行にも行ってきました。
行き先は、相模灘沿いを車で走り伊豆高原へ。

眼下に荒波が打ちつける城ヶ崎の門脇吊り橋や
ぼんやりした動物たちのいるバイオパークや
波打ち際にある粗い岩肌の露天風呂、黒根岩風呂など
空気の新鮮な伊豆をのんびりと楽しんできました。
天気に恵まれ要所で伊豆七島が眺められました。
 バイオパークの羊たち。

なかでも築250年の古い庄屋屋敷そのままの店
”山桃茶屋”はとても素敵なところでした。
もちもちした練り物に田楽味噌をかけた”へらへら餅”で有名な
美味しい山里料理のお店です。
まず駐車場の雨よけの梁にずらっとかかった切り干し大根に驚きました。
まるで暖簾のようで圧巻です。
そこからみかん畑を横目に見やると庄屋屋敷が見えてきます。
 
切り干し大根の暖簾。   庄屋屋敷らしい立派な造り。

濃いめのつゆの田舎うどんやさっくりと歯ごたえのよい天ぷら、
様々な種類の香の物などどれをとっても美味しいです。
この辺りにみかん畑が多いのはまわりを見回すだけでよく分かるのですが、
ここの店主さんも例に洩れずみかん畑をお持ちのようで
甘酸っぱいみかんや驚くほどさっぱりとして美味しい
透き通ったみかんジュースをサービスで出してくれました。
柑橘類のしゃっきりと目覚めるようなあの良い香りに囲まれているなんて
なんて幸せだろう〜と思いました。
 
いろりの脇で食べる食事は風情があっていい。

ここはお食事処だけでなく、お宿もあるそうで食後に辺りを散策してみました。
するとお店の裏山を少し登ったところにありました。
こじんまりとした平屋と離れのお風呂。
とても趣きがあって素敵な宿です。今度はこういう所に泊まってみたいな。
お店にあった大福帳には外国から来られた宿泊客の感想もありました。
チェコやドイツなど、自分が行った事のある国の人だとなおさら興味がわきます。
みんなこの食事や宿に感心しきりといった感じでした。
 
この小さな小屋が離れのお風呂。 もみじの紅葉もきれいでした。

それからお店の入り口には自家製の梅干しやらっきょうの瓶詰めが売られています。
すごく美味しそうなので、お土産に買い求めました。
これがまた素朴で美味しい!
 
こちらはお店の隣の土蔵造りの宿。 お座敷の柱には大福帳がぶら下がっている。

また行き当たりばったりののんびり旅をしたいなと思います。

text by : yuki
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益子秋の陶器市
今月のはじめに益子に行ってきました。
友達のご両親が益子に窯をもっているので、
かねがね訪れたいと思っていたのです。

益子へは2度目で、高校生の時に益子焼き体験をした事があり、
冷たい土の感触を今でもよく覚えています。
その時に買った不思議なお碗を今でも大切にしていて、
高台を下にして置くと真顔なんですが、
高台を上にひっくり返すと髭の生えた人の笑顔が現れる
微妙な仕掛けが絵付けされた取手付きのお碗はよく食卓にのぼります。
今考えると、自分のために初めて買った食器なんじゃないかと思います。

一緒に行った友達夫婦には小さな男の子がいて、
見る度にぐんぐん大きくなっています。
とっても可愛くて、益子に向かう長い車中も
彼の一挙一動を見ているだけで飽きず、すごく楽しかった。

益子の大通りに着くとすごい人で賑わっていました。
通りにはたくさんのテントや露店が出ていて、
そぞろ歩く人で沿道は埋め尽くされていました。
 
露店やお店の裏路地。    益子はとても趣のある町。

早速友達のご両親のテントに案内してもらって、
古道具を柱にしたお手製の棚にずらりと並ぶ器を見せてもらいました。
どれも素朴で、でも洗練されていてすごく素敵!
じっくり悩みながら家に合う器を選ぶ。
お茶碗や湯飲みや片口など2つずつ揃えました。
普段では考えられないお値段で買えるのも陶器市のいいところ。

それからお昼を食べにJAMU LOUNGEへ。
ここは友達夫婦が結婚式を挙げた場所。
地元にこんなカフェがあるなんてうらやましい。
古民家と納屋を改装した居心地の良いカフェです。
自然食のランチもすごく美味しかった。
 おみそ汁がグラスに入ってる!

ランチの後は広い広い陶器市会場を散策。
友達はいろんなところから声をかけられていて、
他人事ながら地元のあたたかさを感じました。
陶器の他に木製品や植木やアンティークや飲食など
いろんなテントがあり、1日中楽しめます。
いや、1日ではくまなく周りきれないかも。
着いてすぐに食器を一式揃えてしまいましたが、
友達のご両親のつくる器はやっぱり一番素敵だと思いました。
 
茅葺き屋根の藍染め工房の様子。   藍の匂いがたちこめています。
 
工房の奥には天然綿と染道具がありました。 藍染め製品もあります。

早々と日が暮れた後はSTARNET ARKへ。
会期中という事もあってすごく混んでいましたが、
衣食住に関する選りすぐりのものが並んでいて見応えがありました。
それから丘の上にある ZONE RECODE にも寄って
作家さんの制作の様子やこだわりを聞く事ができて興味深かったです。
閉館時間を過ぎていたので、今回は寄れなかったけれど、
RECODEの野草茶寮という薬草茶屋もすごく気になりました。

そしてやっと入れた雰囲気の良いARKのカフェの食事も美味しかった。
昼、夜と体に良いものを食べて、おいしい空気を吸い込んで
体の中がさっぱりきれいになった気がしました。
辺り一面真っ暗な夜、星がくっきりと輝いていました。

益子を満喫した後は友達のお父さんに少し離れた駅まで車で送ってもらい、
そこから乗り継いで、今時珍しい駅弁を広げたくなるような対面式の座席が並ぶ
懐かしい車体のローカル電車に乗り込みました。
ずっしり重い器たちを隣に乗せて相手の話が聞こえないほど軋む電車に揺られながら
こっそり新聞紙の包みを開けて、一日を振り返りました。
今は、この器に何を盛ろうか献立を考えるのが毎日の楽しみとなっています。


text by : yuki
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303号室のお店


旅日記の前に、、、

少し前になりますが、
ふと思い立って横浜へ出向きました。

以前、海のそばの古い建物で開催された
美味しい食事や作家さんの品が並ぶ小さな市で
お会いした方のお店へと向かいました。

横浜は古い建物がたくさん残っていて
街歩きが楽しいところです。
こちらのお店も古いビルの一室にあります。
3階建てのビルの303号室。
その名もatelier 303

細長いビルの扉を押すとねずみ色の階段が続いていて
ひんやりとした静かな階段を上るとお店の扉があります。
軽い扉をカチャリと開けると引き続き静かな空気が続いています。
こじんまりとした、穏やかな空間。
机や棚にはぽつりぽつりと素敵な古道具が並んでいて
小さなガラスや器が凛としています。

小さいものが好きという笑顔の素敵な店主さんが
スウェーデンのお茶を入れてくれました。
とても香りがよくて美味しい。
古道具の他に紅茶や、日によってパンも販売しているそうです。

お互いのお店の事や古いものについていろいろお話をして
たくさんお茶をご馳走になりました。
そして、店内は全く手を加えていないと聞いて驚きました。
白と焦茶の2色の壁も、小さな扉もそのままの良さがあります。
古いけれどモダンな雰囲気が漂っています。
土地柄もお店の良さや雰囲気を高めているような気がします。
横浜は、来てみれば近いのに、なかなか行けずじまいになってしまう。
けれど、行けば素晴らしい気持ちになれるところです。

横浜散歩をしながらまたゆっくり、じっくり訪れたいお店です。

  
棚には小さな器が並んでいます。 織り作家Tissageさんのマフラーも素敵。 
  
お店へと続く階段。    昔学校にあったような大きな窓。 

text by : yuki
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京都三人旅 *京見物編*


盆地の京都では、じりじりと照る日射と
お天気雨のように突然降り出す雨とに見舞われました。
日中のほとんどが日向に少し居るだけですぐに汗が吹き出すような
真夏日以上に真夏日、というようなとても暑い気候でした。

日傘をさして向かったのは、以前から気になっていた「京都芸術センター」。
ここは明治に建てられた小学校の校舎をそのまま利用した建物で、
様々なジャンルの芸術的な催しを行っています。
私が今まで歩んできた中で”校舎”という響きに一番適している場所は
やはり小学校のような気がします。
きれいに並んだ教室の机と椅子、大きな黒板に粉っぽい黒板消し、
幅広の階段や、横並びの水道の蛇口、、、。
どこを切り取っても、淡く懐かしいぼんやりした思い出が蘇ってきます。
ここではほとんどの時間を、解放されていた一つの教室で過ごし、
椅子に座ってみたり、教壇に立ってみたり、古いそろばんを触ってみたり。
童心に返るひとときでした。
 
黒光りのする小さな机と椅子。 教室の入り口は思い出の入り口。

校舎はコの字型になっていて3階建て。
隅々まで歩いてみると、普通の校舎のように画一的でない凝った造りで
とても素敵な要素が多く、それはよく考えてみれば無駄な要素が多い。
今では削除されるであろう無駄な小さなスペースこそが
子供達の一番落ち着く場所であり、楽しみの生まれる場所、
秘密の場所なのではないかなと思いました。
自分一人が入れるような所で、
鬼ごっこなんかでひっそりと隠れていた事を思い出します。
 
古い蛇口の付いている水場。 アーチ形の素敵な窓枠。

とても古い建物なので、木材の傷み具合が良い感じ。
階段のきしむ音や木の床に椅子を引く音などがなんとも言えず良いのです。
それでも手入れが行き届いていて小綺麗で気持ちの良い空間なので、
木の床を、ぞうきんに両手をついて走って水拭きしたのは
いつ以来だろうとつい考えてしまいました。
 
がらりと開ける扉に、ぎしりと上る階段。

物心がつき始めた頃の記憶は断片的で、
小学校低学年の頃の事は印象深い事しか思い出せないのですが、
ここへ来てなんだかじわじわと少しずつ蘇ってきました。
太陽が差し込む大きな窓のある教室で、
このぼんやりした感じがなんとも心地良かったです。



その日の夕刻、閉館時間が迫りつつ焦って向かったのは
友人の薦めで訪れた「河井寛次郎記念館」です。
芸術家河井寛次郎が生前住んでいた自宅です。
日本各地の民家を参考にして、独自の構想のもとに設計されたこの家で
作品づくりに励んでいたそうです。
多くの作品、そして彼をとりまく多くのものがここにはありました。
 
とても落ち着く古民家。田舎の家に遊びに来たような感覚になる。

河井寛次郎は陶芸を中心に彫刻、さらに執筆や書も制作する
多方面で活躍する作家で、どれも情熱的でありながら愛嬌のある作品でした。
そんな作品群もさることながら、調度品がとても素敵なのです。
ほとんどが自身で制作したもの、またはデザインしたもので、
芸術家らしい突飛な感じは無くて、落ち着いた素朴なものが多く
この古民家に本当によく調和していました。
 
休憩室にあった革張りの椅子。 自宅2階にあった籐の椅子。

住居スペースと同じくらいある広い中庭を通ると
向かいには可愛らしい形をした素焼き窯があります。
作陶の第一段階の素焼き、この前に座って薪をくべていたのでしょうか。
焼き上がりに思いを馳せる良い時間だったに違いありません。
その少し先には大きな登り釜があって、地下まで掘り下げられた場所から
数段続きます。中が覗けるようになっていて、
器や壷などの陶器が重ねてたくさん並べられていました。
薪も煉瓦もそのへんに散らばっていて当時の様子を垣間見れたようでした。
 
独特な形の素焼き窯とその奥にある大きな登り窯の中。 

窯と窯の間には休憩室、その手前にはとても小さなお茶室もあって
のびやかに作品づくりをしている様子が伺えました。
そして、窯と自宅を結ぶ渡り廊下を通ると、洗面台があります。
記念館の配置図にも記載されていないし、誰も注目しない箇所
だとは思いますが、ここは私が最も気に入った場所でした。
暗い廊下の終わりに突然白いタイル張りの洗面台が現れます。
なんともないただの洗面台ですが、ちょこんと置かれた黄色い花が
白地に浮いてとても綺麗でした。すり減った石鹸も良い感じです。
ここの凛とした空気がなんとも良かったのです。
そのすぐ脇には小さな鏡台もあってそこにも小花が挿してありました。
館内の花は豪華さこそ無いけれど、少しずつ所々にあって
とても可憐で素敵な生け方で目を楽しませてくれます。
 
洗面台と石鹸と黄色い花。

そして、何と言っても家の造りが面白く、空間をとても上手に利用していて
こんな家に住みたい!と心底思うような家なのです。
まず記念館の扉を開けて一歩入るだけで、ここは素晴らしい予感がすると
感じたほどでした。今まで居た外の雑踏を一掃させるような雰囲気でした。
家自体は、広いといえば広いのですが、大きな場所を割いている部屋は無くて
どの部屋も(たぶん)4畳〜10畳程度でこじんまりとしていますが、
思った以上に部屋数がたくさんありました。
あっちにもこっちにも小部屋があって何だか迷路のよう。
畳の上に座卓、そして脇にはちょこんと作品があったりして
最初は座って作品を見、足を崩して作品を見、最後は寝転びながら
寛次郎の詩集を読んだりしていました。
閉館直前で、お客は私たちだけだったので、随分くつろいでしまいました。
心から落ち着ける素敵なお家でした。
 
寛次郎がよく座っていた机。とそこから見える窓の景色。
記念館の周りの建物も古く、窓を開け放していても景観が良い。

帰るのが惜しいと思わせる、魅力溢れる場所でした。
閉館時間に押されるように帰り支度をしましたが、
心は十分に満たされました。
また京都に訪れる機会があれば”河井家に遊びに行く”
ように訪れたいなと思いました。
 
芳名帳の脇には使い込まれた硯が。 館内は靴を脱いで上がります。

記念館を出ると大粒の雨が降ってきました。
この記念館の界隈は京都らしい建物が続いていて風情のある小径で、
雨がとても良く似合う。
雨の日も晴れの日も曇りの日も、
居心地の良い家と全身全霊を捧げて打ち込める何かがあれば
これほど素晴らしい生活はないのではないかなと思いました。
そのお手本を見せられたようでした。

(一番上の写真は法然院。よく知られている名所以外の
私の印象深かった二カ所をご紹介させていただきました。)

<*京見物編おわり*>

text by : yuki
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京都三人旅 *京菓子編*


出会ってからもう10年にもなる友人達と
秋の京都へ出かけました。
お店番は夫に任せて、珍しく女三人の旅。

学生だった頃は毎日毎日顔を合わせていて、
たわいも無い事を飽きもせず延々と話していました。
自分の身に起きた事、見た事、聞いた事、思った事、なんでも。
二人に話さない事は無かったし、
おしゃべりの無い日常は考えられませんでした。
それでもやはり別々の進路にそれぞれ進み
日時が経過するにつれて会う周期も広がってしまいましたが、
相変わらず会っていなかった期間の自分の身に起きた事、
見た事、聞いた事、思った事、なんでも話したくなります。
二人に会った後はいつも晴れ晴れとした気持ちになる。
そんな、大切な親友との学生以来の旅。

それぞれ行きたい目的地はなんとなくあって、
近い区域にまとめてなるべく足を運べるよう計画を練りました。
その目的地の合間に行きたかったのは京都らしい和菓子屋さん。
お寺や名所もいいけれど美味しい京菓子が食べたいと思っていたのです。

一番最初に行ったのはかなり急な坂道を登った先にある「双鳩堂本店」。
ゆるやかな坂に安心していたのも束の間、その先の傾斜を見て足が止まりました。
そして着いてびっくり。とても小さな小さな昔ながらのお茶屋さんでした。
お店というよりも軒下で営んでいるかのような佇まい。
でもそれがとても良い雰囲気でした。
まだ昼だというのに目当ての鳩餅は最後の一袋でした。
登ってきた急な坂を振り返ると買えてよかったと心底思いました。
もっちもちの可愛い鳩型のやわらかいお餅。
一袋に抹茶、白、ニッキの三味が入っています。
ほんのりした甘みでどの味も美味しかったです。
 
可愛い鳩の柄入りのれん。 見るからにもちもちな美味しいお餅。

翌日の朝食にしたのは、錦市場の豆腐屋さん「こんなもんじゃ」
の片隅で揚げている、揚げたてあつあつの豆乳ドーナツ。
小さなミニサイズのドーナツを紙袋に溢れんばかりに入れてくれます。
目の前で揚がったばかりのを熱さに悶えながら食べましたが
ふんわりと口当たりが軽くて甘みは控えめ、いくらでも食べられます。
一袋に三人の手が交互に伸びてあっという間に完食。
 
ふわふわに揚がったドーナツには良い匂いが立ちこめていました。

その日の夜、全てのお店が閉まってしまった時間に
ホテルへ戻ろうと歩いていた時にふと目についたカフェ。
古い町家を改装したような感じで、とても良い雰囲気の建物です。
どうやら上は宿泊できるようになっていて、ちょうど宿泊客が続々帰ってきていた。
それも皆、外国人の方ばかり。カフェスペースも自由に利用していいようで
奥では地図を広げて楽しそうに計画を練っている金髪の女の子たち。
後で聞いてみると、宿泊料はかなり破格!なので海外からの旅行者が多いようです。
今度はこういう町家に泊まってみたいな〜と思いました。
Gojo Guest House-KYOTOの1階の「Gojo Cafe」。
ここで食べたのは濃い抹茶が良い香りの宇治金時のかき氷。
日が暮れてもまだまだ暑かった夜に、ひんやり美味しかった。

陶器のお椀に小豆と氷が山盛り。

そして東京に帰る日の午前に涼をとりに入った「鍵善良房」。
有名なくずきりを頼んで、しばらくしてお茶と共に出てきたのが
菊寿糖という菊型をした生成り色のらくがん。
らくがんは固くて甘くて粉っぽくて普段そんなに食べるものでないし
あまり好きという感じではなかったのですが、
これは口溶けが良くて本当に美味しかったです。
和三盆のきめ細かな結晶が口の中でじんわりほどけていくような感じ。
とても気に入ってお土産にも買っていきました。
その後に登場したくずきりは大きなお重に入っていて、ふたを開けると
黒蜜のお椀と、氷水の張った中にきらりと輝く透き通ったくずきりが。
つろつると喉越しが良く、こちらもとっても美味しかったです。
 
お茶菓子には可愛い紫色も入っていました。(お土産は全て生成り色。)
お店を出ると搬入前の車の中には菊寿糖がずらり!美しい。

他にも古くからある魅力的な和菓子屋さんがたくさん。
また三人でおしゃべりをしながら味わう機会に恵まれるよう
買ったばかりのお守りに祈るのでした。


*京土産*
  
双鳩堂のひょうたん型炭火焼かきもち。 
鍵善良房の菊型らくがん菊寿糖。
河道屋の梅型蕎麦ほうる。

ひょうたんに菊に梅、、、植物を象ったものが好きなようです。
ひとつ摘むごとに嬉しい、ひとくち運ぶごとに美味しい京土産たち。

<*京見物編*へつづく>

text by : yuki
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ほんの少しの遠出 箱根編


3連休からしばらく経ったある日、
突然思い立ち、その日に友達と連絡を取り合い
行き先を決めた月曜の昼下がり。

昼から出発するにしては遅すぎる遠方の箱根に行く事にしました。
遠くて小さくて、そこだけポンっと異空間な離れ島のような博物館
『星の王子さまミュージアム』に行くためです。

以前車で行った事がありましたが、
行きがけの盛り上がる気持ちを冷やすかの様な雨がフロントガラスにポツリと降り、
後に大雨と濃い霧に見舞われて運転がとても大変でした。
その事を友達に話すと、彼女も箱根に行く時に晴れていた覚えが無いと言う。
山の天気は変わりやすいというけれど、
こうも毎回雨に見舞われるものなのでしょうか。
そんな話をしている鈍行電車の外も曇り空。この日もまた雨の予報でした。


小田原駅からバスに乗ってぐんぐん山の中を登って行きました。
お土産屋さんや風情のある箱根登山鉄道の脇を通ると
旅情気分を味わえてほんわりとした気持ちになります。
途中、富士屋ホテルの立派な門構えが見えて、
こういう格式ある古いホテルのロビーで文化人さながらお茶がしたい
なんて話をしながらバスは進んでいく。
蛇行している山道から下を見下ろすと随分と高い所まで来ました。
と思っていたその時、以前も感じたあの切ない光景、、、
バスの大きなフロントガラスに雨粒が降ってきたのでした。
あ〜ぁまた今回も雨だね、と苦笑い。

横浜から約2時間後、バスを降りると
目の前に見慣れたミュージアムが雨の中佇んでいました。
雨のせいもあるのか、休日に比べるととてもひっそりとしています。
でも、それがまた嬉しい。

入り口を抜けるとすぐにプロヴァンス風の石造りの小道が現れます。
フランスの地に訪れたような気持ち、、、とはまた違って
どこの国でもない不思議なところに入り込んだような感覚になります。
子供だましでないとてもよく出来たつくりだけれど、
でもやっぱり”作り物”独特の儚い感じがあります。
それがまたもの寂しい雰囲気を醸し出していて、良いのです。
小道を抜けると王さま通りというお店の立ち並ぶ小さな坂があり、
本屋や道具屋やレストランやいろいろな品がショーウィンドウから楽しめます。
 
王様通りの商店とキノコ料理屋(?)さん

 
金物屋さんのホーローとお化粧品屋のお洒落な石鹸。

そこから展示ホールに入り、じっくりと作者サン=テグジュペリの生涯をたどる。
裕福な家庭に育ち、お城に住んでいた幼少期の写真はどれも
立派な子供服を着ていて、幸福そうな生活の様子が伺えます。
パイロットに憧れていましたが、挫折を繰り返し
タイル製造会社やトラック製造会社を経てようやく航空郵便配達員になりました。
辺鄙な外国の地に配属されたりと大変な役目も担っていたようですが
現地の人間も和ませる柔和な力があるようです。
その後に巨額の賞金を狙って長距離飛行に挑戦して幾度か失敗をしています。
その九死に一生を得た遭難の体験をもとに『星の王子さま』が誕生したのは
有名な話です。また気まぐれでわがままな妻のコンスエロがあの1輪のバラ
に例えられているというのも言うまでもありません。
ジュペリの波瀾万丈な生涯と夫婦の関係、歓喜と挫折の繰り返しの波が
ぐねぐねと上がったり下がったりしている様子がよく分かります。
自分の年譜もいつか遥か先に見てみたいような気もしました。

またデッサンや原画もたくさんあり、その絵心に感心してしまいます。
誰にも真似できないような自由な筆の運びは
特に専門的に学んでいない、好きだからこそ気軽に描けるものだと思います。
 
ジュペリが実際に飼っていたキツネについての手紙と
何か素敵な長いタイトルがついていた気がする紳士の絵。

展示ホールはとても凝った面白いつくりになっていて、
ジュペリの年譜に合わせてその時代にあった状況を再現しています。
最初には子供部屋が再現されていたり、町の一角や赴任先の部屋や
書庫やバーや飛行音のする郵便荷物の積まれた機内まであります。
 
書庫のように本棚に古い本がぎっしり。 壊れたアパートまであります。

 
通っていたバーも再現。 ジュペリのパスポートは多数の国の判が押されていた。

最後には様々な国で出版されている『星の王子さま』の各国語の表紙が
ずらりと並んでいました。
ジュペリが彩色したものではパンチが無いからと英語バージョンでは
おかしな彩色に変えられていたり、馴染みのある王子さまの表紙とは違って
挿絵の違った箇所から表紙の絵にしていたりと各国様々。
チェコなどは他の人が書いた絵を勝手に表紙にしているものもあって
お国柄がでていてとても楽しいです。

私が気に入ったのはバオバブの木の表紙。(王子がいないけどいいのかな、、、。)

薄暗い展示ホールをかなりの時間を費やして見た後に外に出てみると
なんと大雨が降っていたはずの空が青く澄み切っていました。
細く弱い光量ですが太陽も優しく射していました。
この時の清くて嬉しい気持ちといったらありません。
何もかも満たされたような気分になってまた石畳の道を歩き出しました。
 
文中にも出てくる井戸。 ゾウinウワバミの方位計。

ミュージアムの敷地の奥まった所には教会があります。
現在は分かりませんが、確か以前は結婚式ができるようになっていて、
こんな可愛い小さな教会で式ができたら素敵だなぁと思っていました。
と同時にオーストラリアの動物園の中にある小さな小さな
小屋のような教会で結婚式をした時の事を思い出しました。
今日みたいに大雨の翌日の澄んだ晴天の日でした。
 
教会の屋根と飾りけのないシャンデリア。

もう他のお客さんが帰った頃でも時間の許す限り、2人ではしゃいでいました。
晴れているところも撮りたいと雨の降っていた入り口付近にまた戻ったり、
好きなお店屋さんの前で店主になりきった写真を撮り合ったり。
もう園内は私たちだけでした。すっかり満喫していました。

なかなか頻繁には会えないので、友達と遠出をするのはとても新鮮です。
いつも相手に合わせて足を止められないところに一緒に見入ってくれたり
時間をかけたいところにじっくりと付き合ってくれる。
空の様子や花や草木についても自然に話せるし、自然に目を向けられる。
いつも気を遣って躊躇してしまう事ものびのびと出来る。
マイペースな私の速度に合わせてくれているという訳でもなく、
彼女もまたマイペースなのでちょうど同じ速度で息が合う。
そういう関係が素晴らしいなと改めて感じました。
 土星模様の地面。

そんな友達と行けた不思議な離れ島ミュージアム。
もっと早い時間に出ればもう少しゆっくりできたねと言うと
逆にそれがすごく優雅な事だと思うと答えてくれました。
確かに、その通り。とても優雅な1日でした。

text by : yuki
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ほんの少しの遠出 立川編


春の天気は落ち着かない。
燦々と陽光が照りつけていたかと思うと、急に曇って雨が降り出したり、
雨の予報が出ていても、日差しが突然現れたり。
春の晴れは3日ともたないと言われているのも頷けます。
この日は湿った灰色の曇り空でした。
いつ降り出すかわからない空を見上げながら、立川へ向かう。

目的は、美味しいパンを食べる事。
パン好きには有名な名店、ゼルコバへと行ってきました。
以前に行った時も温かくなり始めのまだ少し肌寒い曇りの日で、
偶然にもちょうど1年前の春だったと思います。
少し温かくなってくると行きたくなる、田舎のパン屋さん。

ゼルコバへは、たくさんの乗り継ぎをして、人気のない道を歩いて
やっとたどり着くという所にあります。
車窓からの風景にだんだんと自然が目立つようになると近づいている証拠。
最寄りの西武立川駅からの15分ほどの徒歩がまた良くて、
だだっ広い空き地やちいさな踏切の音、民家の手入れの行き届いた庭など
全てにゆるやかな時間の流れを感じます。

近くまで来ると控えめな看板がいくつか見えて、
それが目に入るとやっぱりいつ来ても良いな〜と思います。
広い庭をぐるりと廻り、店頭に並んでいる自然農法で自家栽培している
新鮮野菜を見ながら中へ入ると、香ばしい良い匂いが漂っていました。
 
薪の上に置かれた手書きの看板。   取れたて野菜の販売。

ここは大正時代に建てられた蚕室を改装して造られたお店です。
いくつもの太くて黒い柱に支えられた平屋で、
天井が抜かれていて梁がむきだしになっています。
上を見上げると屋根の形そのままの傾斜が見えてとても広々としています。
木材の古さやそのこっくりとした色から年輪の重なりを感じます。

店内はパンの並ぶスペースと買ったパンを食べられるカフェスペースがあります。
真ん中にある”ZELKOWA”の名前入りの小さな薪ストーブを囲むようにして、
昔映画館で使われていたような3席並びの連なった木製の折りたたみ椅子や
スポンジがむしれてしまった布ばりの椅子や手作りのような長椅子など
全く違う様々な表情の席があるけれど、不思議と調和がとれていて
とても落ち着く空間です。
そんな店内も良いのだけれど、でも私たちは肌寒いのを承知で
まずはやっぱり外の無骨な木の机とベンチに席を決めました。

パンは、そんなに人が出入りしている気がしないのに
あっという間になくなります。本当に早い。
(たぶん、穏やかな雰囲気が人気を感じさせないのでしょう。)
まずは大好きなバナナのパンを選ぶ。それから3種のレーズンのパン、
イチジクとクリームチーズのパンとコーヒーを頼みました。
 どれも素朴なパン。

バナナのパンはパウンドケーキ型で、好きな大きさにカットしてもらえます。
たくさんバナナが練り込んであるようでずっしり重く、
モチモチした食感とほんのり甘い後味がたまらなく良いです。
レーズンも自家栽培しているようで、レーズンやそれよりも小ぶりのカランツが
ぎっしり入っていてくどくない心地よい甘さがとても美味しいです。
素材にこだわっている天然酵母のパンは本当にどれを選んでも美味しい。

何よりも良いと感じるのは、天然酵母というと
わりと酸味が強いものが多いですが、ここのパンはとてもまろやか。
まわりは香ばしくパリっと歯ごたえがあって、石窯ならではの味わいがあり、
中はフワフワだけではない、モッチリと粘りのある滋味あふれるパンです。

上には真っ白な空と、目の前の庭には椿が綺麗な赤色の五弁花を開いていました。
サワサワと木々の揺れる音が聞こえて、その下をのっそりと猫が横切ります。
この中で食すという事が一番の贅沢かもしれません。

完食して次のパンを選びに行き、今度は席を店内に移してもらう。
外は気持ち良いのだけれど、長時間居るとやっぱり寒いのです。
店内で食べるのもまた居心地良く、のんびりおしゃべりをしながら
以前実家で作ったように、自宅の小さなオーブンでも
美味しいパンが作れるかな〜などど考えていました。
焼きたての良い匂いのパンはどんな人でも幸せにする力があります。
  
素敵な庭を抜けて店内へ。 入り口にあった窯用のパン焼き道具。

随分と長居をして満足し、お土産のパンを買って店を出る。
以前来た時に居た犬たちを見たいと思ってお店の裏に行ってみたけれど
残念ながら不在だった。
でも、扉の閉まっていた小さな白い小屋からは
犬の鼻遣いがグスグスとかすかに聞こえていました。
店の裏はひょうたんがのれん状になっていたり、
手を加えなくても自由に育ってくれそうな元気な植物があったりと
興味をそそられるところがたくさんありました。
 
連なったたくさんのひょうたん。   苔の生えた瑞々しい植物。

帰りは店の前から1時間に1〜2本出ているバスに乗ると、
昭島駅まで行くのでとても便利でした。
そこから国立駅に寄ると駅前の桜並木が見事に咲いていて圧巻でした。
気になっていたお店や古道具屋をまわり、夕方過ぎに西荻窪駅へ。
友達が展示をやっていたので見に行く事にしました。
会場はGallery MADO。いつも魅力的な展示をやっているので
行ってみたいなと思っていた所です。

築70年の古い一軒家の一室をそのままギャラリーとして貸し出しています。
印象的なのは、名前の通り大きな窓。
渋い色の木枠に、格子状に組まれたすかしが付いています。
窓枠には幼い頃土手で編んだ記憶のあるシロツメ草の花飾りがありました。
開催していたのはシロツメ社の「キモチ、贈る」展です。
たくさんの作家さんの良い品を『贈りもの帖』として1冊にまとめて、
販売をしたりイベントをしたりしています。
その『贈りもの帖』も然る事ながら、オリジナルのもの、
友達3人が手作りで製作したものがとても可愛かったです。
シロツメ草模様の判を押したペーパーバックやレターセットや包装紙など
一つ一つ丁寧に作られていました。
素敵な品を買って帰ろうとしたら、もう明日で最終日だからと
シロツメ草をたくさん持たせてくれました。
愛媛から送ってもらったという大振りのピンと張った強いシロツメ草。
大人になってからこんなにたくさん持った事はありませんでした。
思わぬ贈り物がとても嬉しかったです。
こうやって1人の人を幸せな気持ちにさせてくれるのだから
きっと『贈りもの帖』でたくさんの人を幸せにできるのではないかなと思いました。
 
至る所に咲いていたシロツメ草。 シロツメ草ののれんをくぐって中へ。

翌朝、ゼルコバのパンを温めて食べ、早くシロツメ草を飾ろうと
意気揚々と店へ向かいました。

text by : yuki
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ほんの少しの遠出 逗子編


昨日の大雨とは打って変わって快晴。
眩しい太陽が照りつけていました。

気持ちの良い天気の中、この日は神奈川へ。
目指すは逗子にあるCOYAです。
COYAはいつもセンスの良い料理を提案している
フードコーディネーターの根元きこさんのお店です。
ここもずっと行きたかったので、念願叶ってとても嬉しい。

逗子行きの電車に乗ると、
羽田空港にほど近い高校へ通っていた頃の事を思い出します。
通学の朝、京急の目映い赤い車体に、終点が『逗子』
と表示されている電車にたまたま当たると、
このまま終点まで行けばどんな風景が広がっているのかなと
電車に揺られながら、海岸を思い描いていました。

逗子駅に着いた時には地面の熱さは最高潮で
半袖で歩いている人もたくさんいました。
ジリジリと暑い日に海の方面へ向かうのは
とても最適な気がしてワーッと駆け出したくなります。

駅からはそんなに離れていないはずなので地図を見ながら歩く。
ふと辺りを見回すと、完全に住宅街になっていました。
かろうじてあった昔ながらの八百屋さんに道を尋ねると、
随分逸れていたようですが、「この道を真っすぐ行けば着くよ。」との事でした。
誰も歩いていない一戸建ての家が両脇に続く、太陽の照りつける細い道を
あの家が素敵だとか、あそこの庭がきれいだとか、すぐそこに山が迫ってる!
とか言いながら足取り軽く歩いていく。
素晴らしい風景ばかり目に入るので、案外遠回りも悪くはなかったです。
静かでゆったりとした自然に囲まれた生活に憧れている私たちは、
都心から離れた土地ではたいてい「この辺に住みたいと思う?」と
どちらからともなく聞いたりするのですが、この通りを歩いている間中
2人ともずっと「ここなら住みたい!」と連呼していました。
とても魅力的な町です。


楽しい散歩は大通りにぶつかり終了。
そこからは2、3分で着きました。
かなり辺鄙な所にあるのかなと想像していましたが、
思っていたよりも大きな道路沿いにあり見つけやすかったです。

1歩入ると、きこさんの本で見ていた通り、大きな台所がすぐ目に飛び込みました。
サンダルをつっかけて料理をするような、昔ながらの素敵なお勝手です。
店内は程よい広さで、それぞれの席の仕様が違っていて
どの席も独立した魅力的な空間となっていました。
自由に読める本もたくさん置いてあって、センスの光るセレクトだったので
あれこれ引っぱり出して楽しませてもらいました。

今日の天気にぴったりだと思い、石垣島のマンゴーを使ったラム酒入りのソーダ
を頼みました。信じられないくらい美味しくて、また濃い橙色が美しくて
幸せな気持ちになりました。
ランチにハヤシライスも頼みましたが、これまた美味しかったです。
とろんとした温泉卵が乗っていて、飽きのこない味。
食後のコーヒーも揚げたて熱々の素朴な味のドーナツも
どれも本当に美味しくて優しい味がしました。
さらに料理の乗っているお皿も、お水が入ったグラスも1人1人違ったもので、
質感の良い味わいのある食器ばかりでした。

食事が終わると、数段の階段を上った奥にある、その名も”OKU”という
小さな雑貨屋さんを覗きました。
きこさんが旅先で購入してきたものらしき商品が小さなスペースに並んでいます。
バリやベトナムのものが多く、こざっぱりとした
余計なものが削ぎ落とされている印象の素朴な品でした。
2、3畳程の小さなスペースの中、とても目移りしてしまいあちこち動き回って
結局たくさんの品を購入しました。
紙袋に入りきらなかった大きなカゴをそのまま手で持って、
幸せな気分で店を後にしました。
こんなに解放された、みずみずしい気持ちになれたのは久しぶりです。

案内通りに駅に向かうと、とても近かったです。
行きはかなり遠回りしたようでした。
逗子駅から今度は鎌倉駅へ向かう。
逗子の方が遠くに感じますが、実はたったの1駅なのです。
鎌倉駅から江の電で稲村ケ崎駅へ。江の電はものすごい人でした。

  古道具屋R。
稲村ケ崎駅から線路にぶつかるまで歩くと、古道具屋のRがあります。
線路の反対側にあるRへは、スタンドバイミーさながら
踏切の無い、いつ電車が通るかわからない線路を渡らなければ行けません。
たったの5、6歩ですが、それが楽しいのです。
今にも崩れそうな古い木造家屋をそのまま使用していて、
畳の上に古道具が相性良く並んでいます。
小さなカップにお茶をいれてくださったので、お庭を眺めながらまどろむ。
何度来ても気持ちのスッとする良い場所だなぁと思いました。
赤い朽ちた鉄のハサミを買って帰りました。
 垣根だけの簡素な庭も良い。

そこから江ノ島や、鎌倉に戻って小町通りや御成通りをぶらぶら。
そういえばあそこに寄ってなかったとか、行きたいところがあったんだとか
後から色々思い出しましたが、やっぱりまた無計画で訪れる事になりそうです。
鎌倉は、ぶらりと遠出するのにちょうど良いところなのでしょう。
 遠くにぼんやり江ノ島が見える。

日が落ちると同時に鎌倉の活気はいっぺんに無くなり、
あれだけ人がたくさんいたのにもう閑散としている。
観光地の1日の終わりは早いです。
でも昼と夜と相反する顔もまたなかなか良いものです。
暗くなった商店街にぽつりぽつりと灯った料理屋の灯りに風情がありました。

生温かい春の空気に包まれた湘南で過ごした1日。
とても眩しくて貴重な1日でした。
 直販市場の小屋の中。

text by : yuki
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