Sic

今日も頭痛が治まらず一日中寝込んでいた。希舟も妻も具合が悪いようで家の中で過ごしていたが、楽弥だけは元気にどこかへ出掛けて行った。

泥だらけになって帰ってきたと思ったらトウモロコシの芯を手にしている。これは薪ストーブの焚き付けに使える。今朝ちょうど使い切ったのを見ていたのだろう。困ると思って庭の畑から探してきてくれたらしい。それだけでなく「空気が流れるように」と薪の組み方にまで口を出してくる。どうしたら火が回るか彼なりに考えているようだ。

水汲みも薪割りも楽弥にとって楽しいようで寒くても必ず手伝いにくる。小さなことだが遊びと生活が繋がっている。それは生きるうえで大事なことだ。

希舟はというと、出掛ける度にお金を拾う。ルーマニアでは少額のコインが至る所に落ちていて、最初は笑って眺めていたが、最近はコインが落ちていないかと下を向いて歩いている。何度も注意するが、街角のアコーディオン弾きの少年のように自分でお金を得たいらしい。彼女もまた遊びと生活が繋がっているようないないような…。

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希舟の具合まで悪くなり、急遽友人に村の診療所へと連れて行ってもらう。楽弥の声が車中に響く。「これも貰ったんだよ。これも。これも」と膨れ上がったポケットから次々とお菓子が出てくる。昨日、私が寝込んでいた間に彼はひとりで散歩して様々な出会いがあったようだ。村の人々は子供に優しい。

聴診器をあてられる。「鼻を使わないで口だけで深呼吸して」と言われるが喉が痛くて思うようにできない。希舟はあっという間に終わったのに私だけやけに長い。ルーマニアで肺炎が流行っていると聞いて心配したが、ふたりともただの風邪だった。

帰り道に村外れにある塩水の風呂を見に行く。ここは昔、塩鉱だったそうで死海のように体が浮く天然風呂ができたらしい。いつか夏に訪れたい。

その後に見晴らしの良い丘に向かおうと坂道を登っている途中で羊の群れに出会う。見とれていた矢先に羊犬に囲まれる。凄い勢いで吠え立て、車だろうがお構いなしに道を遮り離れようとしない。子供たちが怯えながらも何とか丘の上に着くと、いつもの教会は小さく美しい村が一望できた。ここでは風邪のことも忘れて自然と深呼吸ができる。この村で暮らすきっかけをくれた友人に心から感謝をした。

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馬車が走る蹄の音で目を覚ます。外に出ると赤い民族衣装を着たおばあちゃんが馬車に乗っている。写真を撮ろうとするがカメラは動かない。さらに自分の身体まで怠くて思うように動かない。頭痛がしてそのままベッドに倒れ込む。

その間にまたふたりのマールトンが順番に現れる。獣肉のマールトンに妻が外で対応しているが「イエスタデイバッドマンアイムソーリー」という声が聞こえてくる。頭痛に響く。彼は昨夜のお礼にと大きな瓶に入ったチェリーとカリンのシロップ漬けを持ってきてくれた。強烈な獣肉からは想像もつかない優しい味がした。

いつものマールトンはまたヨーグルトを子供達に買ってきてくれて、横たわる私にそっと布団を掛けてくれた。彼がパーリンカを呑まずに帰っていったのは初めてのことだ。

その後に家を貸してくれている友人家族が遠くから遊びに来てくれたというのに、頭痛が酷くて起き上がれない。可愛い子供達の笑い声だけが微かに響いている。

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カメラが壊れて落ち込んでいると、知らない男が家に入ってきた。そして自分の胸を叩いて「マールトン」「マールトン」と繰り返している。ここ連日家に酒を呑みに来ているマールトンの友達かと訊くと「マールトン」「マールトン」とまた繰り返し笑っている。そうこうしているうちに友人のマールトンがやってくる。マールトンはポケットから四つヨーグルトを取り出して家族ひとりひとりに渡していく。彼のポケットにはいつも三十円相当の緑色のお札数枚しか入っていないのに頑張って買ってきてくれたのだろう。

どうやらシクにはマールトンがたくさんいて、彼らふたりも同じくマールトンらしい。パーリンカを注ぐ前から彼らはかなり酔っている。それでも出会いは一期一会だと思い私は酒を酌み交わす。料理をしている妻に初めて会ったマールトンが声を掛ける。「肉は入れないの?何てことだ。神様!」妻が答えるよりも先に「二分待っていてくれ」と言って部屋を飛び出した。友人のマールトンは頭を指差してくるくる回している。ふたりともふらふらだ。

一方のマールトンはビニール袋を片手に戻ってきた。手渡されたビニール袋はずしりと重く、中には骨付き肉の塊が入っていた。何の肉か訊くと「メイビーピッグ」と片言の英語で返ってくる。でも豚ではないし、鶏でもない。牛にしても獣の匂いが強い。恐る恐るスープに入れてみると臭いが美味い。

しかし夜中になって家族揃って具合を悪くした。きっと偶然だろう。肉のせいではないと思いつつも「メイビーピッグ」と笑うマールトンの顔が浮かんでは消えるのだった。

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