クマ

ぼくはクマ。木のクズで作られた。たぶんクマ。作った人はもういない。どこかへ飛んでいつしか消えた。

ぼくはクマ。錆びたネジを打たれてる。目玉のかわりに打たれてる。見えてはないけど見えている。心の目玉がうごいてる。

ぼくはクマ。緑のリボンをつけている。針金なんて言わせない。緑のリボンは宝物。あの人がぼくにくれたんだ。生まれた時のプレゼント。

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「好きだったら持っていっていいよ。きっとクマも喜ぶよ」それを手にとる度に古道具屋の友人はそう言った。けれど、そう簡単にはもらえなかった。あの人はもういないから。あの人にしか作れないものだから。

たまにそのクマのことを思い出していた。机に散らばった材料で作っている姿を思い浮かべていた。なんの迷いもない。手が勝手にうごいてる。

日曜日、クマをもらうことにした。クマと目が合い、そう決めた。「もらってくれて嬉しいよ。きっとあの人も喜ぶよ」クマを見ながら友人はそう言った。

今、手元にクマがある。あの人はいないが、クマがいる。首を傾げたクマがいる。

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