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起きてすぐに刺繍をやろうとするが、また電気が付かない。配線が古いからか電球が明るくなったり、暗くなったり、変えたばかりの電球が切れたりと電気が安定しない。

仕事にならないので子供たちと遊ぶ。楽弥が畑から木の棒をいくつも拾ってきてテントを作り始めた。日本でキャンプをした時によく見ていたのだろう。ひとりしか入れないが、棒に巻きつけた布の中に椅子や机を置いて、なかなか立派なテントが出来上がった。

そのテントを見にマールトンがやって来る。内ポケットにはビールが入っている。朝からビールとはマールトンらしい。春のような陽気のなか一緒にビールを呑む。

家の前の公園でブランコに座る希舟のところに楽弥が走り寄る。楽弥に背中を押されて「がっくん、もっと押して」と喜ぶ希舟。「もっともっとあの雲まで押して」「きっきぃ、雲を食べたいの?」「あの白い雲を食べようっと。あむあむ」「美味しい?」「甘くて美味しい」そんな会話を聞いて空を見上げてみる。確かに食べたくなるほど綺麗な雲だ。

夕方になって恐る恐るブレーカーをいじってみると電気が付いた。どういう仕組みになっているのか。とにかく夜になる前に電気が付いて良かった。

夜にまたマールトンがヨーグルトを持ってやって来る。いつものようにパーリンカを注いで一緒に呑むが様子がおかしい。虚ろな目で独り言を呟いたり、眠ってしまったり、パーリンカを溢したり、涙を浮かべたりと落ち着かない。母親を亡くして傷ついているのだろう。帰ろうとしては転んで、また呑んでを繰り返して、マールトンは真夜中までひとりで喋り続けた。なんとか自転車まで見送ると、夜空には無数の星が瞬いていた。

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