Sic

シギショアラからゲルラー行きの列車に飛び乗る。切符売り場が混んでいたので、車内で切符を買おうと思ったのだが、駅員が二倍近い金額を提示してくる。これまで何度も車内で切符を買っているが、こんなことは初めてだ。

そんなお金は持ち合わせていないからと次の駅で降りようとすると、違う駅員が来て「大丈夫だから乗ってていいよ」と言う。お金を払わないまま四時間が過ぎる。一体どうなるのだろうと思っていると、やっと駅員が来て「一枚だけ切符を買ってほしい」と言う。二倍近い金額の一枚だから正規の金額と変わりない。不思議に思いながらもお金を渡すと、駅員は切符を発券せずにそれをポケットに入れた。そこから駅員は私達の座っていたコンパートメントで上機嫌に一時間も喋り続けた。きっと臨時収入を手にして喜んでいるのだろう。

八年前は切符を持たない乗客が駅員に賄賂を渡す姿をよく見かけたが、厳しくなったのか今はそういった光景をあまり目にしなくなった。久しぶりに社会主義時代の名残を見たような気がした。

なんとかゲルラーに着いて、寂れたバーでシク行きのバスを待つ。おじちゃんがひとり呑んでいると思ったら、すぐに店を出てしまった。しばらくすると、楽弥と希舟にチョコレートを買って戻ってきた。後から来たおじちゃんもふたりにジュースをご馳走してくれる。ゲルラーに来るといつも幸せな気持ちになる。いつ来ても不思議なくらい優しい人に出会うのだ。

シクに着いて、近くの商店に食料を買いに行くと久しぶりにマールトンに会う。マールトンは店主に楽弥と希舟を「友達のガクとキッキー」と紹介している。四十ほど年が離れていてもそうやって紹介できるマールトンは素晴らしい。そして季節外れのサンタクロースのチョコレートを買ってくれた。

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