Sighisoara

教会から十時の鐘が響いているというのに楽弥も希舟もよく眠っている。夜中にシギショアラの街に着いたので相当疲れているのだろう。

昼過ぎになってようやく外に出る。希舟が遅いと思って振り返ると、歩き方がおかしい。足を引きずっている。昨日のベリンの祭りで歩き過ぎたのだろう。考えてみたら祭りに夢中になって六時間も歩きっぱなしだった。寒さもあって四才の子供にはきつかったのだろう。もう少し休憩すればよかったと反省したが「お祭り楽しかったね。お馬さんにも乗ったよね」と希舟はまだ興奮冷めやらぬようだ。

シギショアラには友人の古道具屋がある。数日前にこの街に滞在していた時は頭痛が酷くて行けなかったのだが、その滞在中に妻と希舟は商店や旧市街で二度も偶然店主のスィミーに会ったという。スィミーは目を丸くして驚き、再会を喜んでいたらしい。日本でも東京の人混みの中で偶然会える人がいるが、きっと何か引き寄せる力を持っているのだろう。

古道具屋に着くなり、楽弥と希舟がスィミーの大きなお腹に飛びつく。ふたりは彼と奥さんのアンジーのことが大好きだ。いつも子供たちと遊んでくれて、美味しいツイカや紅茶やお菓子を出してくれる。店に行くというより友人の家に遊びに行く感覚に近い。

陶器や民族衣装の話からトランシルヴァニア地方の小さな村の話まで彼の話は興味深い。そんな話を聞きながら彼が収集した古物を見て回る。博物館に並ぶような貴重な物までずらりと並んでいる。帰り際に厳選した物を譲ってもらう。スィミーは付いてる値段を見ることもなく利益が出ないような価格を提示してくれる。

彼の感性と優しさは日本の古道具屋の友人とよく似ている。ふたりとも人として面白く、やはりそんな人の集めた物は魅力に溢れている。そして楽弥と希舟が飛びつくほどに大好きな人なのだ。

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