ValeaViilor

昨夜の生演奏は朝五時まで続いた。そのせいか今日は頭痛が酷い。それでも手ぬぐいで頭を冷やして、要塞教会へ向かうことにした。

コプシャ・ミカという駅まで列車に乗り、そこからヒッチハイクをする。これまで幾度となくヒッチハイクをしてきたので、楽弥も希舟も自然と親指を立てている。リュックサックを背負って必死に車を止めようとしているふたりの姿を見ると旅に出てよかったと思える。色々な人に出会いながら目的地に到着した時の喜びを感じてもらえたら嬉しい。

一時間くらいして一度通り過ぎた車が戻ってきてくれた。すぐ近くに住んでいるのに、わざわざ隣村まで乗せていってくれるという。気の良い夫婦で、奥さんが希舟を膝に乗せてヒマワリの種を剥いて食べさせてくれている。丘に囲まれた細い一本道を進んでいくと目の前に羊の群れが現れた。のんびりと歩く羊たちが横断するのを待って、車はヴァレア・ヴィイロルへと進む。

ザクセン人が造った整然と並んだ家々を通り過ぎて、古い要塞教会の前に着いた。お金を受け取らずに「ファンタスティックな家族に会えて嬉しいよ」と子供たちが気に入ったヒマワリの種を大量に持たせてくれた。「ファンタスティック」子供と一緒に旅しているとよくこの言葉を掛けられる。それは嬉しいことだが、それと同じくらいに「君たちはモンゴル人か?」と問い掛けられる。

ヴァレア・ヴィイロルの要塞教会はとにかく素晴らしかった。古い石造りの時計塔が時を刻んでいる。教会の前を馬車が行き交い、ぼんやり眺めているうちにあっという間に時間が過ぎていく。カメラがない方が人間は目で見て記憶に残そうとするのかもしれない。教会の細部までくっきりと頭に焼き付いている。

帰りはヒッチハイクを始めるなりすぐに車が止まってくれ、メディアシュまで送ってもらえることになった。優しいおじさんは、かつてこの辺りの地域に多くいたザクセン人の歴史を教えてくれた。

不思議なことに今朝まで泊まっていたアイリッシュパブに再び戻ってきた。従業員のお兄さんは喜んで、子供たちに大きなグレープフルーツを持たせてくれた。清々しい気持ちのままシギショアラ行きの列車に乗り込む。

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