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どういう訳か朝から電気が点かない。コンセントも使えなくなっている。停電でもないし、ブレーカーの問題なのだろうか。この家で使っているのは電球ひとつだけなのでさほど問題はないが、夜はどう過ごそう。

隣の家のロージーが揚げたてのランゴーシュとプルーンジャムを持ってきてくれる。彼女の作るお菓子はどれも優しい味がする。ロージーが電気のことを心配して旦那さんに訊いてくれるという。

子供たちをジュジと娘のシャーリーに預けて、マールトンの母親の埋葬に向かう。雨に濡れたマールトンの青い自転車が教会の前に一台立て掛けられている。司祭が読み上げる言葉に棺を囲んだ親族が咽び泣いているが、マールトンだけは涙を流していない。母親が亡くなったことをまだ信じ切れていないのか、どこか上の空だ。

親族の手で棺が丘の斜面にある墓地へと運ばれていく。いつも教会のベンチから眺めている美しい墓地。墓地から眺める教会もまた同じように美しい。聖歌が響くなか、花で飾られた棺が男達が手にしたスコップによって少しずつ埋葬されていく。いつも酔っ払って陽気なマールトンが黙ってうつむいている。雨はますますひどくなっていく。

子供たちを迎えに行くとピシュタが薪を用意してくれていた。大袋がふたつ手押し車に積まれている。冬を越すのに薪は何よりも大事な燃料なのに、ピシュタは「無くなったらいつでも取りに来て」と気前が良い。お金も受け取らず、さらにお土産にとパーリンカをくれる。ピシュタに出会っていなければ、薪はもうとっくに尽きていただろう。客人にこんなにもパーリンカを振る舞うこともできなかっただろう。

家に帰ると、やはり電気が点かない。蝋燭に火をつけると希舟がふぅっと吹き消してしまう。どうしてもバースデーケーキのように消したくなってしまうらしい。楽弥も随分と嬉しそうにしている。水道もガスもない暮らしをしていると、電気もなくていいかもしれないと思えてくる。蝋燭が溶けて消えるまで子供たちと一緒に夜を楽しんだ。

| 日々のこと | comments(1) |
体調がすぐれなかったようですが、お加減いかがでしょうか。
さらにだいぶ不便な生活、、大変そうですが
周りの方達の温かさにじーんとしてしまいます。
とりあえず電気だけでも復旧しますように!
| asako | 2019/02/15 12:35 AM |