ゆきだるま



朝から降り続く冷たい雨。
ラジオから流れる各地の積雪情報に大変そうと思いつつも
どこか羨ましさを感じていた。
息子も同じ気持ちのようで物足りなさそうに呟いた。
「雪、降らないかなぁ」

鼻風邪を引いて、初めて耳鼻科にかかった。
長い待ち時間も重なってか珍しく大人しい楽弥。
ようやく終わった頃には待合室には誰もいなくなっていた。

外に出ると、やわらかな雪がはらりはらりと落ちてきた。
辺りはうっすらと積もっている。
「雪、降ってる!ずっと降らないかなって考えてたんだ」
楽弥は喜びの舞を踊り、先程の大人しさが嘘のように
浮かれて飛び跳ねて白い地面に小さな足跡を残していく。

夕食を終えた頃には驚くほど積雪していた。
夫と楽弥はこらえきれなくなって外へと駆け出した。
「おとこのこチームがつくるんだよね、ゆきだるま」
初めての大雪に腰が引けている希舟が言った。
父と兄のことを男の子チームと呼んでいる。
「さむいからさ、おんなのこチームはまってようね」
自分と私のことを女の子チームと呼んでいる。
たいがい女の子チームは楽な方を選ぶ。

家の門から消えていった男の子チームはしばらくして
大きな雪の玉を転がして庭に戻ってきた。
「パパ、がっくんにぃに、ばんがって」と希舟が声援を送る。
真っ白い息を吐くふたりは充実した表情で制作に励んでいる。
「きっきぃ、目と鼻、探してきて!」と夫に頼まれた希舟は
必死になって野菜かごを漁っている。
目にはジャガイモを鼻にはニンジンを頭にはバケツを乗せて
楽弥よりも大きな雪だるまが完成した。

快晴の翌朝、楽弥は布団の中でもぞもぞしている。
冬になってから、毎日のように読んでいた絵本
レイモンド・ブリッグズの『ゆきだるま』のように
夜のうちに遠くへ飛んでいってないかな?とか
朝がきて溶けていなくなってないかな?とか想像して
布団から出られなくなってしまったらしい。
「昨日の場所でちゃんと待ってるよ」と伝えると
慌てて階段を下りて窓にかじりついた。
安堵の表情と輝いた瞳で雪だるまを見つめる。
子供って素敵だなと思う。雪の日は特に。

照りつける太陽でジャガイモとニンジンが落ちてしまった。
保育園から帰ってきて、気を落とさないか心配だが
雪だるまの目と鼻が大好物のシチューになれば
少しは気を取り直してくれるかもしれない。

text by : yuki

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