折り紙の天の川


「ねぇ、折り紙ちょうだい」
「ねぇ、はさみちょうだい」
息子に言われるままに棚の上にあった折り紙とはさみを手渡した。
四才になり、少しずつはさみの使い方が上手になってきたものの
やはり見守っていないと手を切りそうで心配だ。
これでもかというほどに折り重ねて、分厚くなった紙の一番端を
ぎじきじ、ぎじぎじ、じょっきん。
切れた先端が部屋の隅に飛んでいった。
息子は笑って喜ぶが、私は指が飛んでいったのではとひやっとする。

ゆっくり折り紙を広げると、そこにはいびつな星が輝いていた。
保育園で七夕飾りを作ったようで、家でもやりたくなったらしい。
「がっくんにーに、すごーい、かっこいー」
妹に褒められて気を良くした息子は、次々と星を作っていく。
切る箇所や角度を間違えても、それはそれで素敵な模様ができる。
広げる度に小さな感動があり、あっという間に折り紙の山ができた。

子供たちが「さ〜さ〜のは〜さ〜らさら〜」と歌っていたので
私も一緒になって「まきばにゆれる〜」と歌うと
「えっ、ちがうよ、のきばだよ」と息子に訂正された。軒端なんだ。
彦星が牛飼いだからか、幼い頃から牧場だと思い込んでいた。
子供に教わることは多い。

ささのはさ〜らさら〜 のきばにゆれる〜
おほしさまき〜らきら〜 きんぎんすなご〜
ごしきのた〜んざく〜 わたしがかいた〜
おほしさまき〜らきら〜 そらからみてる〜

続きを歌う子供たちの隣で手が止まった。
幼い頃に耳にしていたはずなのに、初めて聞いたような気がした。
金銀砂子という歌詞もそうだけれど、風流な童謡の美しさに
子供といるとふと気付かされる。そして、そういう時は
なんだか心にじんと熱いものが広がっていく感覚がある。

そういえば、息子が短冊に願い事を書いて
「お星様に選んでもらえるかなぁ」
と呟きながら、部屋の片付けをここ数日頑張っていた。
どうやら、お星様が願い事を叶えてくれるかどうかは
自分の行い次第だと思い込んでいるらしい。
お星様に悪事が見つからないように慌てている姿もまた愛おしい。

折り紙の山を一枚ずつ繋げて壁に飾ると
まるで色とりどりの天の川のよう。
「わ〜きれい〜」「わ〜ちれい〜」
と子供たちは声を合わせて拍手している。
こうした日々の小さな喜びが星の瞬きのようだと
子供たちが大きくなったら感じるのかもしれない。
素敵な七夕の夜になりますように。

text by : yuki

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