ルーマニア旅日記 7日目 3/3 後編
玄関で見送ってくれるマリアに手を振りながらペンシオーネを後にする。
村の中心でヒッチハイクをしようと思っていましたが、
車が通る気配はなし。、、、やっぱり。
仕方ないので、隣にいた男性にシエウの行き先を聞いてシエウ方面に歩き出す。
行きはボティザからあれだけ雪山を超えてきたので、
帰り(違うルート)は余裕をもって半日歩く覚悟で臨む。
ポイエニの村はずれの景色を見ながら、時に放浪おじいちゃんと
握手を交し、一服しながらのんびりと歩く。
 
「日本のタバコをくれよ」 「火は持ってるぞ」(しなしなマッチ)

そろそろポイエニの村も終わりかな、、、と思ったところで
1台の車が通り、若い男性があっさり乗せてくれました。
同乗者が2人いて、よく見るとさっき道を聞いた男性でした。
村の中心で待ち合わせをしていたようです。
車は雪道らしいところは通らず、わりと平坦なドライブでした。
 
まだ子供のまっ黒羊がいた。 こっちを向いた!

嬉しい事に、あっさり乗ってあっさり着いてしまった。
雪山の覚悟が、なんだか拍子抜けという感じ。
わがままなものだけれど、ありがたいのに、なんだかあっけない。

いつも通過してはいたけれど、まだ散策した事のないシエウ村に入ってみる。
村の入り口の、家の前の長椅子にいつも座っているおじいちゃんは
連日に渡って度々目の前を通る私たちに何か声をかけたそうにしていました。
笑みを含んだ表情に少し口をモゴつかせていました。
そんなおじいちゃんに挨拶をして、シエウ散策が始まりました。
 
木造教会が見えた。    稚拙なタッチの正教会のキリスト像が好き。
 
教会は小さいけれど門がとても立派。 透かしの真ん中には十字が。

シエウの教会はすぐに現れました。
こじんまりとした木造教会に無骨な鐘つき小屋。
この鐘つき小屋は中に入れて、大きな鐘を見上げる事ができました。
 
教会の向かいに建つ鐘つき小屋。 脇の墓地には可愛らしい墓標がある。
 
3本の紐をうまく操り、3つの鐘を絶妙なテンポで鳴らす。

教会は、入り口の扉の上に薔薇柄の刺繍クロスが飾られていました。
残念ながら鍵がかかっていましたが、中が覗けました。
お祭りなどに使われる村のシンボルの旗がたくさん保管されています。
村人から寄贈されたであろう様々な刺繍クロスも壁一面にあります。
丹精込めて刺繍する村人の篤い信仰心が伺えます。
また、村人が木造教会をとても大切にしている事がよくわかります。
 
扉にはワイングラスの彫刻が。 扉を飾る薔薇柄の刺繍クロス。
 
窓からの光が仄暗い教会内を照らす。 旗がじっと出番を待っている。

シエウ散策を終え、再び幹線道路に戻って、ヒッチハイクをしながら歩く。
すると、素朴なお家の玄関先で編み物をしているおばあちゃんと目が合いました。
写真を撮ってほしいとちょっと恥ずかしそうに言いました。
おばあちゃんが編んでいるのは、たぶん村人がよく使うトライスタという
麻と毛で織られた手作りの肩掛けバッグの紐部分だと思います。
こんな風にして編むんだなぁ〜とじっくり見とれてしまいました。
感心する私におばあちゃんは、お手のものといった感じで、
スイスイすごいスピードで編んでいました。
 
玄関先で編み紐を作るおばあちゃん。とても器用!

そうこうしているうちに、1台の車が止まってくれました。
運転していた男性は、セバスチャン。29才。とてもよく喋る人でした。
英語を話せるのですが、流暢という訳でなく(こちらも同様ですが)
思いつく限りの英語を呼吸する間もなく並べ続けていました。
よく喋るなぁ〜と圧倒されていると、今度は質問攻めにあいました。
賑やかな車内は、蛇行する田舎道をすごいスピードで進んでいきます。

彼は仕事で出ていて、自宅のあるバイアマーレに帰る途中との事でした。
ブルサナの木造教会に行きたいと告げると、快く乗せてくれたのですが、
どうやら彼はその場所を知らないようなのです。
度々車を止めては道行く人に聞き、あれっ?この辺では、、、?と思ったところを
ひゅんと通り過ぎ、結局Uターンして、やっとの思いでブルサナに着きました。
シエウからブルサナは地図上で目測していたよりもかなり遠く感じられました。
でも途切れない会話のおかげで楽しませてもらいました。

親切で愉快な青年セバスチャン。

ブルサナは、これまで見てきた鄙びた木造教会とは違って
わりと築年数の新しい綺麗な教会が広い敷地内にいくつも建っています。
教会だけでなく、大きな修道院もあります。
まだ建設途中?と思われる建物も見受けられました。
あまりにも広いので、どこから見ていいのやら迷ってしまいます。
 
丘の麓にある大きな門。これが目印です。 丘の上の入り口。
 
教会から帰る途中のおばちゃんたち。青のザディエが素敵。

ひと通り敷地内を回りましたが、これだけたくさんの教会があると
なんだか気持ちが散漫になって心がざわつきます。
丘の上に、木々の中に、村の中心にぽつんと佇む鄙びた木造教会の方が
やっぱりいいなぁと思ってしまいました。
(ここまで苦労して探してくれたセバスチャンには悪いのですが、、、)
 
敷地内には何棟もの教会や修道院があります。
 
変わった様式の井戸がありました。現役なのかな?

ブルサナ教会の入り口には、他の教会付近ではそんな事はなかったのですが、
真新しい建物の中にお土産屋や小さな銀行があります。これには驚きました。
観光名所なのでしょう。そこだけ突拍子もない風景になっています。
村歩きの常の長靴姿(泥付き)がなんだか恥ずかしく感じられました。

こちらは、そんなお土産屋に便乗(?)した近隣の民家の露店。

教会を見終え、少しブルサナの村を散歩しながらヒッチハイクを、、、。
と思っていたのですが、車はすぐに止まってくれました。
少し急いでいる様子の寡黙な男性。ピカピカの高級車に乗っています。
この時も泥付き長靴を申し訳なく思いました。
行きのセバスチャンとは正反対の性格の彼に、
ボグダンまでスムーズに乗せて行ってもらいました。
男性は本当に全くしゃべらず、アメリカンポップスだけが車内に響いていました。
綺麗に磨かれた窓から夕暮れ時のマラムレシュの風景を見つつ音楽を聞いていると
ロードムービーの一場面のような気がしてきます。
自分で体感しているのに、遠くから客観的にスクリーンを見ているみたいな気分。
それだけ桔梗色のマラムレシュは映画的でした。
 屋根の上から飛び立たんばかりの鳥飾り。

久しぶりのボグダン。帰ってきた!という懐かしい気持ち。
とはいっても昨日の昼までいたのだから、時間の流れは不思議だ。
日本で過ごす、変化のないあっという間に過ぎる1日とはまるで違う。
ブシュタ家のペンシオーネでは、例によって愛犬ララが熱烈なお出迎え。
そしてパパ、ママが迎えてくれました。「ただいま」と言えるのが嬉しい。
ママは夕食用なのか、ずっしりとした肉の塊を手に持っていました。
夕食まで少し時間があったので、ボグダンを散歩する事にしました。
荷物を置いて、夕刻のぶらぶら散歩に出かける。
 夕暮れの民家の庭先。

少しずつ日が落ち始めている頃、歩いていたらイザ川に出ました。
小さな橋からは夕日が今にも川の先に沈みそうになっているところが見えます。
なんとも侘しい、切ない風景です。
でもこの切なさがなんだかいい。日暮れの時間って淋しいけど、いい。
 イザ川に沈む夕日。

橋のたもとでは、ひとりのおばあちゃんの姿が見えました。
どうやら洗濯をしている様子。パチャパチャ音が聞こえます。
近づいてみると、ずいぶん年季の入って角のとれた洗濯棒を使っています。
洗濯棒は柄の短く厚い木べらのようなもので、
濡らして石鹸をつけた洗濯物を石の上に置き、これでたたきます。
天然繊維の綿や麻や毛は、たたく事によって傷むどころか、
繊維が強く丈夫になっていくそうです。
まさに、おじいさんは芝刈りへ、おばあさんは川へ洗濯に、、、
という昔話そのままの生活を営んでいるんだなぁと実感しました。
 
川で洗濯をするおばあちゃん。こちらに気付いて笑顔を見せてくれた。
 
てきぱきと洗濯物を片付けます。 プラニエという洗濯棒。

そこから少し歩くと、遠くで白いものがポーンと飛び上がったのが見えました。
近づくと今度は白と黒がポーンポーンと飛んでいます。
駆け寄ってみると、それは子羊でした。
斜面を駈けては跳ね上がっているのです。
「はねっかえり子羊」と言われる意味がよく分かりました。
毛でむくむくの大人の羊はのっしりしているけれど、
小さく軽い子羊は1メートルくらい飛ぶのです。
 
小屋に入る前の羊たち。      子羊は元気いっぱい。

ここは、たくさんの羊を飼っているご夫婦の羊小屋でした。
ちょうど羊を集めて小屋にしまうところ。
私たちが乱入してしまい、まとまりがつかなくなってしまったようですが、
笑顔で近づいてきて、子羊を抱かせてくれました。
温かくて、ほんのりミルクの香りがします。
眠たそうな大きな目とピンクの鼻がなんとも可愛い。
動物好きの私としては、天にも昇る気持ちでした。
 
おばちゃんが子羊を抱いて来てくれました。小さくて可愛い!

さらに歩き進むと、昨日動物市が開催されていた空き地に出ました。
人がいないと、こんなにも殺風景でだだっ広く感じるものなのか。
昨日の熱気はどこへ、、、。閑散としていました。
だいぶ暗くなったので、そろそろペンシオーネへ戻ろうと
来た道を引き返していると、先程の羊飼いのご夫婦に会いました。
仲良く並んで橋を渡って帰るところでした。
カメラを向けるとにっこり笑顔で肩を組んでポーズをとってくれました。
いくつになってもこんなに仲良しでいられるって素敵だなぁと心底思いました。
 
とっても仲睦まじい羊飼いのご夫婦。

ペンシオーネに着いたらすぐに夕食となりました。
今晩はシュニッツェル!ウィーンでよく食べました。
ここでもそのままシュニッツェルと呼ぶそうで、ポピュラーな食べ物のようです。
さっきママが持っていた肉片はこのシュニッツェルに変わったのですね。
味がしっかり付いていてサクサク。とっても美味しかったです。
付添えのマッシュポテトも絶品でした。
 
トマトベースのチョルバ。 シュニッツェルとマッシュポテト。

ついに、マラムレシュ最後の夜となりました。
ずっと憧れていたマラムレシュ。
新築の家や若者の最新のファッションなど近代化はそこかしこに感じられましたが、
それでも素朴な部分は充分に残っています。
古い樅の木の家や民族衣装などに期待してしまいがちですが、
伝統的でも近代的でも、なによりも心を打たれるのは、
人そのものがあたたかくて素朴なことです。
優しくて親切でフレンドリーな村人に会いにまたここに来たいと思っています。
 村の大通りになびく三角旗。

text by : yuki
| 買い付け旅日記 | comments(0) |