ルーマニア旅日記 7日目 3/3 前編
朝8時。
昨夜約束していた朝食の時間です。
10時間ちかくも泥のように眠ってしまった私たち。
旅中こんなに睡眠をとる事なんてまずないのに、
マラムレシュは、す〜っと就寝を誘う不思議な場所である。
 ポイエニの朝。

1階の居間に降りると、昨日と変わらない優しい笑顔で
マリアが迎えてくれました。マリアはいつでも笑顔を絶やさない。
「おはよう」と挨拶を交した次の瞬間にはすぐに朝食の準備ができていた。
こちらの人はなんでも手際がいい。
机を前にじっと座って深く考え込む事や頭を悩ませる作業があまりないからか、
いつでも何かしら立ち回りよく働き、そのうえ要領がいい。
 
ボリュームたっぷりの美味しい朝食。 花柄のコーヒーカップが可愛い。

昨夜のメニューに加え、パンとプラムジャムに目玉焼き、ソーセージ、
飲み物は水、牛乳、コーヒー、フルーツティーとなんでも揃っています。
昨夜も出てきて感動したのは手作りケーキ。
村にはレストランはおろか、ケーキ屋さんなんてないので
ここで美味しいケーキが食べれるとは思わなかった。
ママは「ノンスーパーマーケット!」としきりに言っていて、
全て手作りという事を料理を運ぶ度に説明してくれます。
スポンジや生クリームも新鮮な卵や牛乳を使って作っているみたい。

昨日と合わせて1人10個くらい食べた。信じられないほど美味しいケーキ!

朝食後は、ポイエニの村を散歩する。
地面には雪が残っているけれど、よく晴れた気持ちのいい天気。
マリアに見送られ、何も持たずに手ぶらでの散歩は気楽で楽しい。
 マリアのペンシオーネ。

出て早々、民族衣装を身につけたおばあちゃんに出会いました。
おばあちゃんは手に糸繰り棒を持っています。
飼っている羊の毛をきれいに洗って、棒に巻き付けて
そこから少しずつ指先で縒って毛糸にするのです。
この”糸繰り姿”を見かけたのは後にも先にもこのあばあちゃんだけでした。
散歩しながらも、おしゃべりしながらも糸を繰るおばあちゃんの姿。
麗しい、ルーマニアの田舎らしい光景です。
ここのおじいちゃん、おばあちゃんはとても元気!
家畜の世話や畑仕事、お酒やジャム作りなどに余念がないといった感じで、
忙しそうに元気に働く姿をよく見かけます。
  
糸繰り棒を持ったおばあちゃん。 刺繍クロスの洗濯物。
 
繰って糸にしたものが干してあった。これが上のクロスや衣服などに変身する。

他の村同様、特別見ものがあるわけではないけれど、村を一周してみる事にした。
まずは、やっぱり木造教会へ。これを見ない事には始まらない。

教会へは、白亜の立派な新しい教会を横目に小高い丘の上へと登って行きます。
一面の雪の中に焦茶色の尖った頭をぬっと出しているのがポイエニの木造教会です。
教会の周りを大きくぐるりと囲んでいる柵に沿って点在している屋根付きの門を
くぐって敷地内へと入る。その中には、教会、四阿、墓地があります。
教会は扉が開いておらず、中には入れませんでした。
この教会は内部のフレスコ画が素晴らしいそうなのでとても残念。
 
丘の斜面に建つ木造教会。 お隣のとんがり屋根の四阿。
 
木造教会の入り口の門。日陰には雪が残り、日向はすっかり溶けていた。

教会のすぐそばの四阿のような掘建て小屋の椅子に腰掛ける。
太陽の光が反射する雪の眩しさに目を細めながら
教会を見上げたり、何をする訳でもなくぼんやりする。
すると、女の人が何かを大事そうに抱えてすぐ近くを通りかかった。
「こんにちは」と挨拶をして近づくと、腕に抱えられていたのは子羊でした。
生まれたばかりの可愛い子羊。腕の中でじっとしています。
頭を撫でると、温かくしっとりとしていた。本当に可愛い!
村では、動物たちに自然と触れあえるのがとても幸せ。
 
長椅子と机。ここでトランプに興じるのかな。こんなに素敵な独り掛けの椅子も。
 
腕に抱かれた可愛い子羊。 こちらはパンダ顔の羊。

教会でのんびりした後は村をぶらぶらとあてもなく散歩する。
小さな村は、真ん中にイザ川が流れ、木造教会あたりが高台になっている。
馬車の車輪が通った後の硬く固まった雪のわきの新雪の上をポフポフ歩く。
村人と挨拶を交すと、挨拶以上の言葉が返ってくる。
「どこから来たの?」「どこに泊まっているの?」
「ああ、マリアのところね」「よく眠れた?」
「あなたたち結婚しているの?」
と、みんなだいたい同じ事を聞いてくる。
「結婚しているの?」の問いには、必ず両手を軽く握って人差し指を出し
少し曲げてフック状にして人差し指を絡ませたジェスチャーをする。
これが”結婚”という意味らしい。
ひと通り聞くと満足してまたもとの仕事に戻る。
ここの村人は人懐っこくて、あたたかい雰囲気に包まれています。
 
自分がすっぽり入ってしまいそうな大きな鍋を背負ったおばあちゃん。
 
オピンチをはいたおじいちゃん。これから畑に向かうおばあちゃん。

学校の前を通ると、小さな子から大きな子まで一緒くたになって
校庭で遊んでいました。ちょうど中休みだったのかな。
カメラを向けると、はにかみながらも嬉しそうに笑顔を向けてくれる子供たち。
みんな素直で可愛い。
 
子供たちはカラフルな防寒服を着ています。鮮やかな色が好きみたい。

そうそう、この村は”ポイエニ”と通称で呼んでいるけれど、
正式名称は”ポイエニレ・イゼイ村”です。
昨日歩き通したボティザ村の分村なのです。
ポイエニとは、森の中のぽっかり開けた空間という意味らしい。
四方を森林に囲まれたこの村にはぴったりの名前。
実は、ポイエニ村の歴史は1人の罪人から始まっているのです。
ボグダンから軽い罪を犯した男性がポイエニの丘に身をひそめ、
時効になってから家族や親族や仲間を呼び寄せたという。
彼は名前を改名してイリエシュという姓に変えた。
そのため今でも村ではイリエシュ姓が最も多く、
ペンシオーネの家族もその中に含まれ、イリエシュ家の末裔という事になる。
マリアからイリエシュという名字を聞いた時、おお〜!と心の中で思いました。
もとをたどれば皆親族という事になるので、なるほど村に一体感がある訳です。
 
「写真を撮って!」とおばあちゃん。編み物ポーズで写りたいとの事。
 
入り口の小さなおばあちゃんの家。ポットツリーならぬバケツツリー。 
 
家の隣には家畜の飼料を貯蔵する小屋があり、息子さんがそこに飼料を入れ込む。

民家は、昔ながらの樅の木の家が他の村よりも多いように思いました。
素朴な家を見つけるたびに嬉しくなる。
日本も、風情のある古民家が減少していくように、こちらでもまた、
同じように樅の木の家はかなりのスピードで減っているようです。
マラムレシュの田舎の景観が変わってしまうのはとても淋しいですが、
誰にも止める事ができない現実です。
 
古い木造家屋。家の前の大きな樽は自家製のお酒(ツイカ)かな?
 
樅の木の家の象徴、花模様の柵。光を通したこの模様を見るのが好き。

いろいろな村人に出会って村を一周したら、お昼になっていた。
ペンシオーネへ戻るとマリアが「お昼は食べる?」と聞いてくれる。
朝食をお腹いっぱい食べたので、まだそんなに空いていない。
断ろうかなと思ったけれど、せっかくなので「少しだけ」と答えた。
そして着席すると、あれよあれよという間に机の上がいっぱいになった。
朝のメニューに加え、見た目はちょっとインパクトが強いのですが
食べてみるとすごく美味しい腸詰めが出てきました。
お肉とお米が詰まっています。これももちろん手作り。
茹でたてでプリプリしていて美味しかった。
漬け具合のちょうどいい野菜のピクルスも美味しい箸休め。
再びお腹いっぱいになった。
 ペンシオーネの昼食。

帰り道のルートを検討してから、マリアに別れを告げる。
マリアは淋しそうな表情で「次はいつ会えるの?」と聞きます。
「また来年訪れたい」と言うと、ぱあっと嬉しそうな表情に変わる。
もちろん社交辞令のつもりはなく、また絶対にここの村に、
このペンシオーネに、マリアに会いにに来たいと強く思いました。

再会した時はきっと、マリアは大喜びしてくれるはずです。

text by : yuki
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