ルーマニア旅日記 6日目 3/2 前編
ブシュタ家のペンシオーネの朝。
おやすみの挨拶もそこそこに電気をつけっぱなしで寝てしまった。
前々日の夜に徹夜をしたまま、たくさん歩いたので
相当疲れていたのだと思う。お風呂も入らぬままだった。
朝、お風呂を借りたのだけれど、前夜に先に入った夫が
青ざめて出てきたのを思い出した。途中で水風呂になったと言う。
泡だらけの体を流せぬまま拭いて出てきたらしい。とても寒そうだった。
私もクルージのホテルのシャワーが途中で水になり、
凍える思いだったので、お風呂を借りるのがちょっと怖い。
お風呂場には大きなタンクがあって、温度計のようなものが付いています。
タンクのお湯がなくなると水風呂になってしまうのか、、、よく分からない。
でも、朝風呂は運良く始終お湯が出てとても気持が良かった。

今日も天気がよくて本当に気分がいい。
ホテルでは味わえないのどかな朝。庭からは鶏の朝の挨拶が聞こえる。
パパが「Good morning!」と言いながら朝食を両手に抱えて入ってきた。
あっという間に机の上がいっぱいになる。
飼っている鶏から採れた新鮮卵の目玉焼きや昨晩の夕食のサルマーレ、
パンとすもも(プラム)ジャムに、朝からツイカまである。
どれも美味しくて幸せな気持ちになる。
 
サルマーレは毎食でも飽きない。 手作りのプラムジャムが美味しい。

身支度を整えていると、通りから馬車の行き交う音が絶え間なく聞こえる。
パッカパッカパッカ、、、モォ〜ォ、、、ピギーピギー、、、
馬の蹄の音だけでなく、様々な動物の鳴き声が聞こえる。
目の色を変えてペンシオーネを飛び出すと、そこには不思議な光景が広がっていた。
 まぶしい朝日の中を歩く人々。

道いっぱいに馬車や牛車、荷台に豚や羊を乗せたトラック、
各々の家畜を引っ張ったり、誘導したりする人でごった返していました。
そう、今日はこのボグダン・ヴォーダで動物市が開催されるのです。
動物市とは、家畜の売買や交換をする市場。
決まった村で決まった曜日に開催されています。
ここは第一月曜日に開催され、大きな市場のためたくさんの人で賑わいます。
ボグダン・ヴォーダに来た理由のひとつはこの動物市を見たかったからです。
 
たくさんの馬車が通りを行き交っていた。

動物たちの行列について行くと、木造教会の手前の路地を曲がった。
曲がった先はだだっ広い空き地になっていて、
そこには驚くほどたくさんの動物たちがいました。
馬や牛たちは寒そうに白い息を吐きながら大人しくじっとしています。
 
馬たちは綺麗に飾り付けられている。 背中に掛けられた織物が素敵。

動物たちの間を縫って進むと、ピギーッピギーッというけたたましい鳴き声が。
豚が麻袋に詰められるところで、必死に抵抗しています。
抵抗もむなしくすっぽり袋に収められ、今では麻袋がもごもご動いています。
こういった取引があちこちでされています。
  
子豚に、子牛。その表情はどことなく淋しげ。

動物市の奥には日用品市もあります。
食品や、植物の種に球根、鍋からほうき、自転車まで何でも揃います。
衣料品は民族衣装から古着まで様々。靴屋も帽子屋もいます。
動物市は眺めるだけですが、ここでは様々なものが買えて楽しいです。
 
お鍋は地面にじかに。タイツは柵に。陳列方法も面白い。
 
ロマの姿も見かけた。 この特徴的な派手な格好はよく目立つ。

特に民族衣装に合わせる伝統的な靴、オピンチ屋さんがあり、
独特な形をしたオピンチを選ぶのが面白かった。
オピンチを試着した夫いわく「雲の上を歩いている気分」だそうです。
冬が長く、雪やぬかるんだ道を歩くのに適しているオピンチは、
若者はほとんど見かけませんが、年配の方が履いているのをよく見かけます。
羊毛で出来た温かい布を巻いて、編み上げの紐をぐるぐる巻いて、、、
その姿がなんとも微笑ましい。ここの土地の人はオピンチが本当によく似合う。
 
オピンチ屋の店主が紐をつけてくれた。子供から大人まで様々なサイズがある。
 お洒落なおじさんの足下はやっぱりオピンチ!

広い青空市はたくさんの人で溢れかえっていて、
友達同士でおしゃべりをしたり、熱心に品定めをしたり、
子供を引き連れて我が子に合う服を見立てたり。市は活気に溢れています。
大勢の人がいる中で、ふいに声をかけられました。
昨日イエウド村で豚を見せてもらった家具職人のおじさんです。
「やあ!こんなところで」と気軽に声をかけてくれる。
偶然にもこれだけの人がいる中で知り合いに会えて嬉しい!
市には、特別入り用のものがなくても、誰かしらに遭遇できるので
わざわざ遠くの村から出向く人も多いらしい。一種の社交場となっています。
 
食材の市場は一番賑わっている。 新鮮な野菜や果物が山積み。
 
民族衣装のしましまエプロン、ザディエをつけているおばあちゃん。

市場の中央にはミティティ(ルーマニア風肉団子)の屋台があり、
辺りに煙といい匂いを漂わせています。
美味しそうな屋台を前に、通り過ぎる事ができず少し早めの昼食をとる。
ミティティと大きなソーセージとビールを頼む。
ミティティにはその量に見合っていないほどの大量のマスタードが付いてきた。
たっぶりのマスタードをつけて食べるのがルーマニア流らしい。
屋台の脇には即席のテントが張られ、その下には机と椅子が用意されていました。
平日の昼間からみんなビールを片手にミティティをつまんでいます。
椅子はほぼ満席で、みんなお隣同士と賑やかにおしゃべりをしています。
 
ミティティの屋台。恰幅のよい店主が焼いているからなお美味しそう!
 
これがミティティ。パン付き200円。こちらはソーセージ。パン付き200円。
どちらも安くてジューシーですごく美味しい!

私たちが座った目の前には、これまた昨日会った人が座っていました。
ここの村に着いた時にマガジンで一緒にリキュールを飲んだおじさんです。
おじさんは「よくぞここに座ってくれた」といった風で、
握手をしてにこやかに何度も頷いています。
こうして私たちの顔を覚えてくれる人がいるのが何とも嬉しい。
たった数日の滞在でも、ここに友達がいるような気持ちになれる。
 
ミティティとおじさん。  ソーセージとおじさん。(延々おしゃべり)

おじさんと昼食を共にしてから、もう一周散歩をする。
それまで気が付かなかったけれど、動物市の先には川があった。
イザ川だ。マラムレシュの村々はイザ川に沿って続いている。
川には大きな橋がかかっていて、そこから市の様子がよく見えた。
昼過ぎにはもう動物の取引は終了して、次々と家畜を引き連れて帰って行く。
利かん坊の馬に手こずったり、子羊がはぐれたりと橋の上から見ていると面白い。
 穏やかに流れるイザ川。
 
暴れ羊に手を焼く牧童。 やっと群れはまとまり橋を渡り帰っていった。

ペンシオーネに戻って、さて、次の村に移動しようと意を決める。
マラムレシュの中でも幹線道路から外れに外れた村、ポイエニへ行く事にした。
辺鄙な寒村だけれど、無事に辿り着けるのか、、、。
必要最低限の荷物を持って、それ以外はペンシオーネに置いてもらう事にした。
明日の夕方に戻ってくると告げて、再びボグダン・ヴォーダを離れる。
 
今度は市場から帰る人々でごったがえす幹線道路。
みんな上機嫌でホクホク顔をしている。

また次の村へと向かう。
今度はもっと奥地の村へ。
なんてのびやかで楽しい旅路なんだろう。

text by : yuki
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